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2024/02/09
プロンプトエンジニアリングとChatGPTで何ができる?エンジニアの活用事例、プロンプトエンジニアについても解説
近年、人工知能(AI)の進化は目覚ましいものがあります。その中でも特にChatGPTのような言語モデル(人間の言語を理解し、言葉を生成するために設計されたコンピュータプログラムの一種)が大きな注目を集めており、これを上手に活用するためのノウハウの一つが「プロンプトエンジニアリング」です。2022年頃から各種メディアで話題になっていたので気になっている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、プロンプトエンジニアリングの意味や活用事例、エンジニアのChatGPT活用法、そして新たに注目され始めた「プロンプトエンジニア」という仕事について解説します。
プロンプトエンジニアリングとは何なのか?
プロンプトエンジニアリングとは、AIや機械学習モデル、自然言語処理(NLP)を用いた言語モデルに対して、特定のタスクを実行させるために最適な質問や指示を設計する技術を指します。
もっと簡単に説明すると、
「AIに私たちの質問や指示を理解してもらい、的確な答えや結果を引き出せるようにするための技術=質問の仕方(プロンプト)の工夫をこらすこと(設計)」なのです。
たとえば、レストランで何を食べたいかを決めかねているとします。友達が「何か食べたいものはある?」と聞くのと、「甘いものか、しょっぱいもの、どっちが食べたい?」と聞くのとでは、後者の方が答えやすいですよね。これと同じように、プロンプトエンジニアリングは、AIからより的確な情報を引き出せるような質問や指示(プロンプト)を与えていくことが重要になります。
プロンプトエンジニアリングで何ができる?ChatGPTを利用する場合の活用事例
AIから精度の高い回答を得るためには、良質な質問(プロンプト)を考えなければなりません。
文章作成であれば、「このトピックについての記事を書いて」という曖昧な指示よりも、「このトピックについて、5段落の記事を書き、各段落には事例を一つずつ含めてください」と具体的に指示する方が、こちらが望む文章が生成されやすくなります。
また、単に「日本の歴史」と聞くのではなく、「日本の江戸時代について簡単に説明してください」と具体的に尋ねることで、より正確かつ関連性の高い情報を得られるようになるでしょう。
こうした工夫を重ねた結果(つまり、プロンプトエンジニアリング)、たとえばChatGPTを使って次のようなことが可能になります。
物語や記事を書く
指定したテーマやスタイルに沿った物語や記事を書いてくれます。たとえば、物語や音楽の歌詞、特定のトピックに関するブログ記事などの作成が可能です。第170回芥川賞を受賞した九段理江さんは作品執筆の際に生成AIを利用したことを明かしていますが、プロンプトエンジニアリングを学んでAIにオーダーすれば、このような創作活動に活かせるのです。
詳細な情報を得る
質問に対してAIから詳細な情報を引き出せます。学術研究や業務上の調査などでの活用場面が想定されますが、現段階ではあくまで”簡単な調査”において有用であり、引き出された回答の真偽や根拠は別途調べる必要があります。特に生成AIとして今のところ最も有名なChatGPT(GPT-4)は2022年1月までに発表された情報しか保有していないため、やはりファクトチェックは欠かせません。しかし、この点をふまえたうえで情報調査に利用するのであれば、非常に便利なツールであるのは間違いないでしょう。
自然な翻訳文を作る
物語や詩などの創作も可能なのですから、文脈を考慮した自然な翻訳もお手の物。単語単位での直訳ではなく、読みやすく、表現豊かな翻訳文が簡単に作成できます。
学びをサポートする
学習中に生じる疑問や問題に対して具体的な回答や解決策はもちろんのこと、学習した内容を確認するためのクイズや演習問題も提供してくれます。試しに「IT企業で想定される日常英会話を練習したいので、付き合ってください」というプロンプトを出してみましょう。英語のチャット会話が始まり、IT企業の日常会話でよく使うフレーズを学べます。
テキストを分析・要約する
大量のテキストデータから重要な情報を抽出したり、長い文章を短い要約にまとめたりできます。急いでいるときの情報整理や迅速な理解に役立ちますし、文章作成の参考になることもあるでしょう。
プログラミングのサポート
プログラミングに関する疑問やコードの書き方を教えてくれたり、コードの例を提供したりといったプログラミングのサポートも。ChatGPTの無料版ではコードの実行はできませんが、有料版では「Code Interpreter」というプラグインをインストールすれば可能になります。
チャットボットの作成
ユーザーの質問や要望に対して、より人間らしい、自然な対話を行うチャットボットの作成も可能です。これにより、顧客サービスやエンゲージメントの向上が期待できます。
各種カスタマーサポートや教育、エンターテイメント、販売アシスタントなど、さまざまな分野での応用が可能なうえ、複雑な機械学習モデルのトレーニングやインフラの構築は不要。しかも多言語対応なので、世界中の人々に利便性の高いサービスを提供できるようになります。
プロンプトエンジニアリングを学んで業務効率化!エンジニアのChatGPT活用事例
エンジニアとしての日々は絶え間ないデッドラインと複雑な課題であふれていますが、そのようなときこそ、AIとプロンプトエンジニアリングの出番。良いプロンプトを出せれば業務を効率化できます。
ここでは良質のプロントを出すことによって可能になるエンジニアのChatGPT活用事例を紹介しましょう。
1. コードの自動生成と解析
プログラミングに関する説明や要件を入力するだけで、それに応じたコードスニペットを自動的に生成できます。たとえば、「ユーザーの入力を受け取って、その平均値を計算する関数をJavaScriptで書いて」というようなリクエストに対して、ChatGPTは即座に該当するコードを提供してくれます。
また、既存のコードを読み込んで、その動作を詳しく説明させることもできます。これは、大規模なプロジェクトや、理解が難しい既存のコードベースを扱う際に非常に役立ちます。エンジニアがコードをChatGPTに提示し、「このコードは何をしているのか?」と尋ねると、AIはそのコードの目的、動作の流れ、使用されている主要なアルゴリズムやデータ構造についてわかりやすく説明してくれるのです。
2. バグ修正と最適化の提案
エラーメッセージやプログラムの挙動を説明するだけでプログラムのバグを特定し、修正案を提案してくれます。また、パフォーマンス最適化のためのアドバイスやリファクタリングの提案も得られるので、きれいで読みやすい、かつ効率的なコードベースを維持できます。
3. テクニカルドキュメントとヘルプデスク
ChatGPTを使用して、APIドキュメント、ユーザーガイド、FAQセクションなどのテクニカルドキュメントを素早く作成できます。「プログラミングは好きだけど、文章作成は苦手……」というエンジニアにはうれしいポイントです。
4. プロジェクト管理のサポート
プロジェクトの進捗管理、タスクの割り当てなど、プロジェクト管理業務をサポートしてくれます。ミーティングの要約やアクションアイテムを提案・リストアップしてもらうことも可能です。
純文系が大活躍する!?AI時代の新しい職種・プロンプトエンジニア
AI技術の急速な発展に伴ってAIエンジニアが誕生しましたが、これと同じような流れでプロンプトエンジニアリングが注目され始めると次は「プロンプトエンジニア」という新たな職種が登場するようになりました。
では、このプロンプトエンジニア、一体どのような仕事なのでしょうか。
プロンプトエンジニアの仕事内容
プロンプトエンジニアの主な任務は、AIに対して効果的な良質のプロンプト(質問や指示)を設計し提供することです。前述の通り、これによってAIはより正確かつ関連性の高い情報を提供できるようになるため、プロンプトエンジニアはAIと人間のコミュニケーションを円滑にし、AIの応用範囲を広げる職種として注目されています。
プロンプトエンジニアに求められる能力
したがって、プロンプトエンジニアには、以下のようなスキルと知識が求められます。
<言語能力>
AIに正確に意思を伝える言語能力が必要です。言葉を正確かつ慎重に選び、意図した通りにAIが理解できるよう伝えなければならないからです。ここでの言語能力には正しい文法や語彙の使用だけでなく、その言葉が使われる状況への理解も含まれます。
<ファクトチェック・修正に対応できる知識と経験>
生成された内容が正確であることを確認し、必要に応じてファクトチェック・修正できるレベルの専門知識や業界経験も必要です。AIはトレーニングデータに基づいて情報を生成しますが、そのデータには不正確な情報や古い情報が含まれている場合があるため、プロンプトを扱う側にも情報の正誤を判断できるだけの知識と経験がなければ生成した内容の正確性を担保できないからです。
<創造性>
プロンプトエンジニアは新しい問題や予期しない問題に対して、AIにどのように対応させるかを考えなければなりません。ですから、従来のやり方にとらわれず、新しい視点からプロンプトを考え出す創造的な思考が求められます。
以上から、プロンプトエンジニアに言語能力のほか、非常に高いコミュニケーション能力も求められることがわかります。プロンプトはAIに出すものですが、そのAIを活用するのは人。そして人がどのような意図でどの言葉を選択するかは人それぞれですから、高度なコミュニケーション能力は必須であり、もっといえば「人間という生き物への理解」も必要だと言えるでしょう。
「エンジニア」といえば多くの人は理系専攻を想像しますが、プロンプトエンジニアにおいてはいわゆる”純文系”人材の活躍が脚光を浴びる日も近いかもしれません。
プロンプトエンジニアの活躍が期待される業界
プロンプトエンジニアの活躍が期待される業界はソフトウェア開発やデジタルマーケティングなどのIT・Web業界に限りません。
AIを利用してパーソナライズされた学習プログラムや自動化された評価システムの開発が進んでいる教育業界、医療データの解析や診断プロセスの最適化、患者とのコミュニケーションの改善が急務となっている医療業界、顧客の問い合わせに対する精度の高い回答が求められるEC業界など、プロンプトエンジニアの活躍の場は多岐にわたります。
プロンプトエンジニアに資格はあるのか?
AIを本格的に活用する時代に入り、今後は高需要が見込まれるプロンプトエンジニア。
しかし、まだまだ人材不足であるため、「早いうちに関連資格を取って希少人材になりたい!」と考えている方もいらっしゃるでしょう。
この点、国家資格はありませんが、次のような民間主催のAI生成関連資格・検定ならあります。
・Generative AI Test
一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)主催の生成AIの検定です。生成AIに関する知識や活用の際に求められるリテラシーを問う検定で、ビジネスパーソンが業務で生成AIを活用するための基礎知識が出題されます。
・生成AIパスポート試験
生成AI活用普及協会(GUGA)が主催する生成AIの資格です。AIに関する基礎知識や活用スキルを問う資格で、生成AIの基礎知識が出題される点ではGenerative AI Testと共通点があると言えるでしょう。
どちらもオンラインで受検できるIBT方式なので、書籍やeラーニング等で基礎を学んだ後に、知識の定着を確認する意味で気楽に臨んでみてはいかがでしょうか。
まとめ
プロンプトエンジニアリングは、ChatGPTなどの先端AI技術を効果的に活用するうえで欠かせない分野として、急速に重要性を高めています。
これを証明するように、プロンプトエンジニアの求人もすでに数多く出回っていますから、言語・コミュニケーション能力に自信があり、AIに関する知識を身に付けているなら、思い切って挑戦してみるのも良いでしょう。
開発やインフラのエンジニアの方はこれを機にぜひ、良質なプロンプトの作り方を学んで業務に活かしましょう。一部で生成AIはエンジニアにとって脅威になるとの意見がありますが、AIが提示するものすべてが正解とは限りませんし、精密な設計はやはり人の頭脳と手によらなければ実現できないのが現状です。怖がらず、活用して味方に付けてしまいましょう!
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