テストエンジニアに向いている人とは?必要な資格や将来性、年収を解説

テストエンジニアは、ソフトウェアやシステムの品質を保証するために不可欠な役割を担っており、その業務内容や責任範囲は広範囲にわたります。開発現場において、テストエンジニアの存在はプロジェクト成功に欠かせない「最後の砦」と言えるでしょう。本記事では、テストエンジニアに必要なスキルや資格、テスターやQAエンジニアとの役割の違い、将来性や年収、キャリアパスなどについて詳しく解説します。
特にテスターからステップアップを目指している方やテストエンジニアに興味のある方に向けた情報を提供しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.そもそもテストエンジニアとは?業務内容を徹底解説
▽テストエンジニアとは?
テストエンジニアとは、開発されたソフトウェアやシステムが仕様通りに動作するかを確認する職種です。品質を保証するためにテストケースを作成し、動作検証を行います。システムにバグや不具合があった場合、正常に機能しないだけでなく、ユーザーに大きな影響を与えてしまうため、テストエンジニアの役割は非常に重要です。
▽主な業務内容
テストエンジニアの具体的な業務は、ソフトウェアやシステム設計通りに動作するかどうかを確認するために、まず「テストケース」を作成することから始まります。このテストケースは特定の機能や動作を検証するための具体的な手順や条件を定義したものであり、主に次のような種類に分類されます。
・機能テスト
ソフトウェアが指定された機能を正しく果たしているかどうかを確認する基本的なテストです。
・非機能テスト
パフォーマンスやセキュリティ、使いやすさなど、機能以外の品質を確認します。
・回帰テスト
修正や新しい機能が追加された際に、他の部分に不具合が発生していないかを確認します。
▽不具合の原因分析と改善提案もテストエンジニアの重要な業務
またテストエンジニアは単にソフトウェアやシステムのバグやエラーを見つけるだけではなく、これらの原因を分析し、開発チームに正確なフィードバックを提供してプロジェクトを強力にサポートする役割もあります。
たとえばある大規模なEコマースサイトのプロジェクトで、リリース直前にパフォーマンスの問題が発生したとします。開発者は原因を特定できず、リリースの遅延が懸念されていました。ここで、テストエンジニアが負荷テストを実施し、特定のAPIが高負荷時にボトルネックとなっていることを発見した場合、テストエンジニアがAPIの呼び出し頻度を減らす設計上の改善提案を行ったことで問題が解決され無事にリリースできた……といったケースなどがあります。
このようにテストエンジニアが不具合の原因分析を行い、適切な改善策を提案することで、開発者が効率的に問題を修正できるようサポートすることもテストエンジニアの重要な役割の一つなのです。
※実際の業務内容は企業によって異なりますのでその点は注意が必要です。
▽テスト自動化の進展
近年では、テストの自動化が進んでおり、手動テストに代わってテストスクリプトを用いた自動化テストが主流となりつつあります。これにより、テストの効率が飛躍的に向上しました。手動で行うテストには時間とコストがかかるうえ、ヒューマンエラーによる正確性のゆらぎもあるため、テスト工程のスペシャリストであるテストエンジニアやQAエンジニアがテストスクリプトを作成し、自動化テストを実施するスキルが求められるようになっているのです。
プログラムコードの作成には一定のプログラミングの知識が求められるので、今後はプログラミングスキルが十分にあるテストエンジニアが重宝されるようになるといえるでしょう。
2.テストエンジニアとテスター、QAエンジニアの違いは?
テストエンジニア、テスター、QAエンジニアは、共にソフトウェアの品質を守る役割を持っていますが、その業務内容や責任範囲には明確な違いがあります。なにかと混同されることも多いため、ここでしっかり把握しておきましょう。
- テスター:仕様書に基づき、実際にソフトウェアを使用してテストを行う役割です。テストケースを実行しバグを見つけますが、テストケースの設計や改善策の提案は行いません。未経験者でも業務に参加できるケースが多い傾向にあります。
- テストエンジニア:テストの計画から設計までを担い、テストケースを作成・実行。単にバグを見つけるだけでなく、その原因を分析し改善策を提案します。テストエンジニアは、品質向上のための技術的知識とコミュニケーションスキルが求められます。
- QAエンジニア:テストエンジニアが行うテストの管理やサポートを行い、開発の初期段階から製品の品質を保証します。品質管理全般を担うため、テストの枠を超えた広範な知識とリーダーシップが求められるといえるでしょう。
3.テストエンジニアに向いている人とは?~この仕事を楽しいと思える人の特徴~
テストエンジニアは開発物の不具合の発見を通してプロジェクト全体の成功に貢献できる、やりがいのある仕事です。
では、テストエンジニアに向いている人、つまり、テストエンジニアとしての適性があってこの仕事が楽しい!と思えるのはどのような特徴を持った人なのでしょうか。
1. 細部にこだわり、忍耐強く作業できる人
テストエンジニアの業務はバグやエラーを発見し、どの操作や条件でそれが起きたのか詳しく説明し、開発者が問題を修正しやすくすることが重要です。
そのため、細かい部分まで丁寧にチェックし、問題が発生している場所を正確に特定する力が求められます。小さなバグやミスも見逃さない注意力を持ち、同じ作業を繰り返す忍耐力がある人は、この仕事に向いている言えるでしょう。
2. 問題解決にやりがいを感じる人
テストエンジニアは単にバグやエラーを見つけるだけでなく、これらが起こる根本的な原因を追究し、解決策を提案することも重要な役割です。機能が複雑になればなるほど、原因不明のエラーや予期しない不具合が発生することがあります。
このような問題を解決するための仮説を立て、試行錯誤しながら最適な方法を探すことにやりがいを見出せる人は、この仕事に非常に向いています。
3. チームとのコミュニケーションが得意な人
テストエンジニアは一人で作業するわけではなく、開発者やプロジェクトマネージャーと連携しながら進めることになります。円滑なコミュニケーションができるスキルが求められるといっていいでしょう。
4. 新しい技術を学ぶ意欲がある人
IT業界は日々進化しており、テストエンジニアの世界も例外ではありません。テスト自動化ツールの導入や、AIを活用したテスト技術の進化など、常に新しい技術やツールが登場しています。自己研鑽できる人であればテストエンジニアの仕事を楽しめますし、早期のキャリアアップも可能です。また、日ごろからwebサービスなどに興味関心があり、毎日のようにネットサーフィンをしている人も、テストという仕事を楽しみながら遂行できる可能性が高いです。
5. 柔軟な考え方ができる人
テストが計画通りに進まないことがあります。時には予想外の問題が発生することもあるため、柔軟に対応できる能力が求められます。状況に応じてアプローチを変えたり、改善策を考えたりする柔軟な思考を持つ人は、テストエンジニアの仕事を楽しめるでしょう。
またチームやプロジェクトの状況に応じて優先順位を調整し、適切な判断を下すことができる人も、成功するテストエンジニアの特徴の一つです。
4.テストエンジニアのキャリアパス
テストエンジニアとしての経験を積むと、さまざまなキャリアパスが開けます。テストエンジニアから目指せる具体的なキャリアにはどのようなものがあるのでしょうか。ここではその一例をご紹介しましょう。5年後、10年後のキャリアパスを知ることはモチベーション向上にもつながりますよ。
テストリーダー/マネージャー
テストリーダーやマネージャーはテストチームを率いてプロジェクト全体のテスト計画を立て、進捗管理を行う役割を果たします。
テストエンジニアとしての経験は効果的なテストケースの作成やチームメンバーの技術的サポートに大いに活かされるでしょう。
QAエンジニア
前述の通り、QAエンジニアはテスト業務だけでなく、製品全体の品質を保証するプロフェッショナルです。
テストエンジニアとしての経験は、テストケースの設計や実行を深く理解する上で非常に重要ですし、こういった知識があれば、品質保証プロセス全体の設計、開発フローの改善、リリース後のフィードバックを取り入れた継続的な品質改善の管理にも大いに役立つはずです。
テスト自動化のスペシャリスト
テストエンジニア時代にテストを自動化する経験をしていれば、将来的にはテスト自動化のスペシャリストとして職位・年収ともにワンランク上を目指せる可能性も考えられます。
実際、テスト自動化のスペシャリストの需要は高まっており、金融(フィンテック)やEコマース、ヘルスケア分野での求人が増えています。
プログラマー
テストエンジニアとしての経験は、プログラマーへのステップアップにもつながります。
テスト業務の際、プログラミングの学習を同時並行していればコードの構造を深く理解できるようになりますし、バグやエラーの原因を探る作業はもちろん、自動化テストのスクリプト作成の経験もプログラマーとしてのキャリアに直結します。
また、開発物全体の品質や性能を客観的な視点でチェックする習慣は、高品質なコードを作成する能力として役立つでしょう。
プロジェクトマネージャー
プロジェクトマネージャー(PM)は、開発プロジェクト全体を総合的に管理・監督する職位です。
テストエンジニアとしての経験は、品質管理やテストプロセスの重要性を理解した上でプロジェクトをリードする力として活かされるでしょう。
もちろん、テスト業務で培った問題解決能力や細部への注意力もPMの職務を果たす際の大きな武器になります。
5.テストエンジニアの将来性と生成AIによる影響
AIの進化により、業務に活用する機会も飛躍的に増えています。ただしAIがすべてのテスト業務を代替することは現時点では考えにくいでしょう。テストは人間ならではの感覚や判断力、創造的な問題解決能力が必要とされる場面が多く、熟練のテストエンジニアの役割が依然として重要です。
AI時代を見据えたスキルアップを!
とはいうものの、AIが適用される領域は年々拡大していますから、準備は必要です。
したがって、AI時代にテストエンジニアが持続的に価値を提供し、キャリアを発展させるためには、次のようなポイントを心がけましょう。
・AIや自動化ツールを積極的に活用するスキルを習得する
AIや自動化ツールはテストの一部を効率化するために欠かせない存在になっており、手動のテストだけでは対応しきれない繰り返しの多いテスト作業や、回帰テストのような領域では自動化が進んでいます。そのため、テストエンジニアはSelenium、Appiumのようなテスト自動化ツールのほか、複雑なシナリオやカスタムテストが必要な場合に備えてプログラミング言語(Python、Javaなど)を使ってテストスクリプトを作成する能力も身に付けておくことをおすすめします。

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・AIで自動化しにくいテストに対応できるようにする
AI時代においても必要とされるテストエンジニアであり続けるには、AIでは自動化しづらいといわれるユーザビリティテスト、異なる環境やサービスとの複雑なインテグレーションテスト、そしてエッジケーステスト(予測しづらい特殊なケース)に対応するスキルが重要になってくるでしょう。
これらの領域はAIだけでは完全に処理することが難しく、テストエンジニアとしての創造的な問題解決力や状況に応じた柔軟な判断が必要だからです。
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6.テストエンジニアの平均年収
やりがいや将来性と同じく重要なのは年収です。一般的に、テスターでは高い年収が見込めないといわれているため、同じくテスト領域を担当するテストエンジニアについても年収の面で不安を感じている方が多いかもしれません。
この点、テストエンジニアの年収は他のエンジニア職種と同様に経験年数や地域、企業規模によって大きく異なりますが、テストエンジニアはテスターの上位職であるため、テスターより高い年収が見込めるでしょう。
テストエンジニアの平均年収は400万円~600万円
まず、テストエンジニアの全国平均年収は約400万円~600万円とされています。
これは、他のIT職種と比較しても平均的な水準ですが、テストエンジニアとしてのスキルや経験が増えることで、より高い年収が期待できます。
経験が浅い、またはテスター業務からステップアップを目指す場合は年収300万円~400万円が初任給の相場となりますが、経験を積むにつれて増えていくのが一般的です。
地域別の年収の違い
地域によってエンジニアの需要や発達している産業が異なるため、都市部と地方では年収に差が出ます。
・首都圏:500万円~700万円程度
東京や横浜などの首都圏ではIT業界全体が活発で、テストエンジニアの求人も豊富です。
そのため平均年収も比較的高く、500万円~700万円程度。特に、大手企業や外資系企業でのポジションではさらに高い年収が期待できます。
・関西圏:400万円~600万円程度
関西圏では400万円~600万円程度と、東京に次ぐ高い水準です。特に大阪の企業では東京ほどではないものの、比較的高めの年収を得られる傾向があります。
・地方都市:300万円~450万円程度
地方都市や郊外のテストエンジニアの年収は300万円~450万円程度とやや低めです。
地域によってはテストエンジニアのポジションが極端に少なくなる傾向があるため、都市部に比べて求人の選択肢が限られることもあります。しかし、リモートワークの増加により地方でも都市部の企業で働く機会が増えていますから、この傾向は今後変わる可能性があるでしょう。
経験年数別の年収
テストエンジニアとしての経験年数も年収に影響を与えます。以下は、経験年数別の年収の目安です。
・1年未満(新人):300万円~400万円程度
実務未経験や経験が浅いテストエンジニアの場合、年収は300万円~400万円程度が一般的です。まずは基礎的な知識やスキルを身に付け、プロジェクト経験を積むことで、さらなるキャリアアップが期待できます。
・1~3年(若手):400万円~500万円程度
実務経験が1~3年程度になると、年収は400万円~500万円程度に上昇します。この時期には、テスト設計や自動化ツールの活用など、より高度なスキルを習得することで、さらなる年収アップが狙えます。
・3年以上(中堅以降):500万円~700万円程度
経験が3年以上になると、年収は500万円~700万円程度に達することが多くなります。特に、リーダーやマネージャーポジションに就いてチームを率いたり、プロジェクト全体を管理したりするようになると、より高い年収が期待できます。また、テスト自動化や品質保証の分野での専門知識を身に付けることで、さらなるキャリアアップも可能です。

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7.テスターからテストエンジニアにキャリアアップしたい場合に必要なスキルや資格
最後に、テスターからテストエンジニアにキャリアアップしたいと考えている方に向けて、テストエンジニアになるために必要なスキルを整理してお伝えします。
テスト設計のスキル
テストエンジニアはテストケースを設計する役割を担います。要求仕様や設計書をもとに、どのようなテストが必要かを自ら考え、適切なテストケースを作成できる能力が必要です。
テスト自動化の知識
繰り返しますが、今後のテストエンジニアに求められるスキルの一つがテストの自動化です。テストを効率化できるよう、先ほど紹介したSeleniumやAppiumなどのテスト自動化ツールを活用できるスキルを身に付けておきましょう。手動テストを効率化することで、より複雑なシステムのテストに対応できるようになります。プログラミングの基礎知識(PythonやJavaなど)を身に付けておけば、より複雑なシステムのテストに対応できるようになるでしょう。
バグやエラーの原因分析力
バグやエラーが発生した場合はその根本原因を探り、的確なフィードバックを開発チームに伝える分析能力が必要です。これには、ソフトウェアやシステムの構造を理解して原因を一つずつ検証し、バグやエラーの元を効率的に見つけ出すスキルが役立ちます。
コミュニケーション力
テストエンジニアは開発者やプロジェクトマネージャーと連携して問題を解決することが求められます。テスト結果を適切に報告し、プロジェクト全体の進行に貢献できるコミュニケーション力が重要です。
資格は必要?
テストエンジニアになるために必須となる資格は特にありません。ですが資格取得によって生まれるメリットは知っておきたいもの。実務経験だけでなく資格取得がスキルの証明となり、結果的にキャリアアップにも繋がりやすくなるといえるでしょう。持っていると役立つ資格をいくつかご紹介します。
1.日本ソフトウェアテスト資格認定機構(JSTQB)
ソフトウェアテストにおける国際的に認められた資格ISTQBの日本版で、国内で認知度が高い資格です。Foundation Levelという基礎に該当するレベルと、Advanced Levelという上位レベルがあります。テストの基礎から実務的なテスト技術まで体系的に学べます。
2.IT検証技術者認定試験
一般社団法人IT検証産業協会(IVIA)が主催するテストエンジニア向けの資格試験です。テストの現場での実務能力を重視した内容になっており、初心者から専門家まで5つのキャリアクラスを設けています。初心者ならまず「アシスタント」から受験するのがおすすめです。
3.ソフトウェア品質技術者資格認定(JCSQE)
ソフトウェア品質に関する知識と技術を証明する日本発の資格です。品質管理やテスト技法、品質改善の手法についての理解を深め、実務に活かせるスキルを習得することができます。
8.まとめ~テストエンジニアは重要な役割
テストエンジニアはソフトウェアの品質を守る重要な役割を担っており、求められるスキルや経験も多岐にわたります。経験を積むなかでテスト業務の専門性を深め、キャリアアップすることができる職種といえるでしょう。自動化やAI技術が進化する中で、柔軟に対応できるテストエンジニアは今後も需要が高いと予想されます。
常に改善を追求し、挑戦を楽しめる人にとって、テストエンジニアは非常にやりがいのある職種なのです。
<あなたのキャリアを加速させましょう!⇒スキルや経験を活かして、新たな挑戦をしたいとお考えなら、ぜひアイ・ディ・エイチへ。理想のキャリアへの第一歩を踏み出す>

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