インフラエンジニアがフリーランスになるには?独立に向けた実務経験の積み方や案件単価、在宅案件について解説
「フリーランスとして独立したいけれど、インフラ系はあまり情報がない」。
これはインフラエンジニアの方からよく上がる声です。
開発系エンジニア向けのフリーランス関連情報は非常に多いのとは対照的に、インフラエンジニア向けの情報は確かに少ないのが現状でしょう。
周りを見渡してもフリーランスとして活動しているインフラエンジニアはそうそう見つからないのではないでしょうか。
そこで今回は、インフラエンジニアがフリーランスとして独立するまでの実務経験の積み方や案件単価、業務内容、人気の在宅案件について、IDHフリーランス代表の伊藤が解説します。
【解説者プロフィール】
<IDHフリーランス代表:伊藤貞治>
1978年生まれ。25歳でこのIT業界に営業職で就職。3年ほど営業職を経験後、「売れるためには技術力が必要」と思いエンジニアにキャリアチェンジ。32歳でプロジェクトマネージャーとなり、以降7年間で担当したプロジェクト数は50件以上。
PMP合格、資格取得者(現在は失効)。直近5年間で1万人以上のエンジニアの選考と面接しているエンジニア出身経営者。
目次
インフラエンジニアがフリーランスになるには?独立に向けた実務経験の積み方
フリーランスになる道のりはインフラエンジニアと開発系エンジニア、どちらであっても大差ありません。エントリーレベルのエンジニアとして企業に入り、数年~十数年の実務経験を経て、スキルと経験が十分になった頃に独立する……といった流れはどのエンジニア職種であっても大体同じです。
インフラエンジニアに「即独立」の選択肢はない
ただ、インフラエンジニアの場合は一部の開発系エンジニアに見られるような「プログラミングスクール修了後に即独立」の選択はあり得ません。インフラエンジニアは企業のIT基盤に触れる職務であるため、最初は企業に所属するか、もしくは業務を受託したSESやSIerの社員としてクライアント企業のプロジェクトに参画するしか経験を積む方法がないからです。一般的に考えて、システムやサービスの安定的な稼働を左右するインフラ業務を、実務経験のないフリーランスに任せることはしないでしょう。
ですから、インフラエンジニアがフリーランスを目指す場合、最低でも数年の会社員エンジニア経験が必須となります。
インフラエンジニアがフリーランスになるまでの実務経験の積み方
では、フリーランス志望者は会社員時代にどの業務を、どれくらい経験すればよいのでしょうか。
ここからは会社員のインフラエンジニアがフリーランスになるまでの実務経験の積み方を解説しましょう。
・1. 保守運用業務を1~3年経験する
未経験者は入社後、サーバーやネットワーク、システムの監視、障害発生時の対応、定期的なメンテナンスなどの保守運用業務からキャリアをスタートさせると思います。保守運用は”IT基盤を見守るガードマン”として重要な役割を果たしますが、来る日も来る日も同じような作業が続くため、つまらないと感じることが多いかもしれません。ですが、将来のために経験しておいて損はないので一定期間はがんばってください。運やタイミングが良ければ、人によっては1年ほどで次のステップ(構築)に進めるでしょう。
・2. 構築業務を3年ほど経験する
保守運用業務を経験した後は先輩エンジニアが作成した設計書に基づいてサーバーやネットワーク、クラウド環境を構築する業務に移ります。
構築に使うツールや技術を状況に応じて適切に選ぶプロセスが入ってくるため、ここで初めてエンジニアらしい仕事をしていると実感する方が多いのではないでしょうか。この構築業務を3年は経験しましょう。
・3. 要件定義や設計業務を2年ほど経験する
最後は上流工程の要件定義や設計業務です。IT基盤そのものを形作る重要な工程ですから、インフラ関連の総合的な知識はもちろんのこと、チームメンバーとの連携やステークホルダーとの折衝を円滑に行うコミュニケーションスキル、プロジェクトの流れ全体を監督できるマネージメントスキルも必要になり、会社員のインフラエンジニアとしてはキャリアの総仕上げの段階に入ります。
以上、ざっくりと説明しましたが、結論、インフラエンジニアは独立前に6~8年の経験年数(会社員エンジニアとしての経験)が必要で、この間に「保守運用」「構築」「要件定義・設計」の業務をすべて経験しておきましょう。所属企業が大手SIerであれば理想的です。
ポイントは上流工程(要件定義・設計)をしっかりできるようにしておくこと。ここが完璧と見なされてはじめてフリーランスへの道が開けると言えます。
また、独立前の「6~8年」の経験年数はあくまで順調にキャリアアップできた場合の数字です。スキルの習得スピードやプロジェクトの内容によって多少前後するとは思いますが、早くキャリアアップできたからといって6年を待たずフリーランスに転向するのはおすすめしません。
優秀な方であれば6年未満でもフリーランスにはなれますが、あまりにも早い独立は上流工程の経験が少ないと見なされ、優良案件を獲得できない可能性があります。
インフラエンジニアの独立ベストタイミングは35~45歳
基本的に、インフラエンジニアがフリーランスになるまでにかかる年月は開発系エンジニアより長いと言って差支えありません。開発系エンジニアのようにポートフォリオを提出できないため、結局は会社員時代の実務経験がものを言うからです。
となれば、独立のタイミングは35~45歳。若手の方は焦らず、企業の中でじっくり経験を積みましょう。先ほども説明しましたが、経験が不十分なまま早期に独立しても好条件の案件の獲得は難しいうえ、エンジニアとして成長できる機会を逃してしまいます。
心のゆとりを持ちながら新しいことを学べたり、チャレンジできたりする環境が与えられるのは、会社員エンジニアの大きなメリットの一つ。すべての責任が自分自身に重くのしかかるフリーランスの立場ではなかなか思い切ったことができません。
インフラエンジニアのフリーランス転向に資格は有効?~経験不足は資格でカバーできるのか?~
IT業界の花形である開発系エンジニアと比べて地味で裏方的な存在のインフラエンジニアは、フリーランス転向の場面でも地道な歩みが要求されるわけです。早く独立したい方にとってはもやもやする話でしょう。
資格取得=強力な武器にはならない
少しでも早く独立したい―。
そんな焦りを抱えるインフラエンジニアなら「資格取得で実務経験をカバーできないだろうか?」と考えるかもしれませんね。
インフラエンジニアは他の職種よりベンダー資格が豊富なので、知名度のある資格をいくつか取ればその分、多様なスキルを証明できると思われるのでしょう。
ところが、知名度のある資格は取得者も多く、希少価値は下がります。つまり、案件獲得の強力な武器にはならないのです。もちろん、資格取得が無意味というわけではありませんが、思うほどアピール力は高くありません。
CCIEとオラクルマスタープラチナは高評価
希少性という点で見れば、CCIE(Cisco Certified Internetwork Expert)とオラクルマスタープラチナはどのような場面でも高く評価されます。どちらもIT業界ではトップクラスの難関資格であり、合格者が非常に少ないからです。そもそも、これらの資格に合格している方は実務経験も申し分ないことが多いのですが……。
また、日本ではまだ知られていないような、新しい技術の資格も同じく希少性ゆえに高く評価されるでしょう。
”新しさ”と”希少性”は常にエンジニアの市場価値を決める要因の一つであることを覚えておいてください。
インフラエンジニアのフリーランス案件の内容とは?~仕事内容や単価について
次に、インフラエンジニアのフリーランス案件の内容についてお話ししていきましょう。
案件数は?
まずは案件数についてですが、開発系よりは少ない傾向にあります。
インフラエンジニアの業務には管理者権限が必要であることはご存じだと思いますが、この管理者権限を渡されたエンジニアの操作一つでシステム全体に大きな影響を及ぼすため、インフラ領域は信頼できる自社の社員に任せたいと考えるのが普通です。
そうなると、フリーランスに任せられる業務は限定されていき、必然的に案件数も少なくなるのです。
ただ、現在はインフラエンジニアの数自体が開発系と比べると少ない関係上、インフラ領域については案件をめぐってパイの奪い合いになる事態にはなっていません。確かにインフラエンジニア向けの案件は多くはないのですが、スキルと経験がある方であれば案件獲得はそう難しくはないでしょう。
(参照:IDHフリーランス「フリーランスエンジニアの再就職は難しいのか?再就職を成功させるポイントや入社しやすい企業、再就職後の注意点について解説」)
高単価は上流工程の案件:100~120万円
セキュリティリスクが最も高い工程は構築ですから、インフラエンジニアのフリーランス向け案件は構築以外が多くなります。
高需要かつ高単価なのは要件定義と設計を担当する上流工程の案件で、IDHフリーランスではコンサルタント的な立場で参画する案件が目立ちます。このような案件はインフラエンジニアとしての総合的な力が試される難易度の高い仕事なので、確固たるスキルと経験が必要になる点は覚悟してください。
保守運用案件:高スキルなら80万円も可能
上流工程以外だと保守運用の案件が多くなります。
会社員エンジニアにとって保守運用は未経験者~若手が担当するロースキル業務だと思われがちですが、フリーランスとなれば話は別。”保守運用のプロ”としてわざわざフリーランスに依頼するのですから、会社員エンジニア以上のスキルがあることは大前提です。1次サポートはもとより、2次サポートにおいても一人でほぼすべてを解決できる力量があれば80万円台の案件も視野に入るようになります。
インフラエンジニアの案件はサーバーかネットワーク、クラウドのどちらを主戦場とするかによって単価に差が出ますが、10年以上の経験があるベテランであれば年収1000万円超えも十分可能です。
詳しい案件単価情報はこちらのページ(「フリーランスエンジニアのための単価相場ガイド~IDHフリーランスで高単価案件を獲得したいエンジニア必見!~」)をご参照ください。
フリーランスのインフラエンジニアはリモートOK?気になる在宅案件の動向
フリーランス志望者のなかには単価より「在宅で働けるかどうか」を重視している方もいらっしゃると思います。当社はエンジニア側のこうした要望は熟知しているので在宅案件を用意できるよう努力していますが、コロナ禍後は完全在宅(フルリモート)ではなく、週または月何日かの出社が必要なハイブリッドワークが増えています。
完全在宅の案件がまったくないわけではありませんが、ハイブリッドワークが主流になりつつある点は頭に入れておいてください。
なお、現役インフラエンジニアの方ならご存じの通り、オンプレミスで在宅案件はありません。在宅で働けるフリーランスを目指す場合は独立前にクラウドに対応できるようになっておきましょう。
ここ数年は在宅案件に人気が集中していますが、常駐案件には「仕事とプライベートを区別しやすい」「対面コミュニケーションがあるので孤立しにくい」「現場で仕事に有利な人脈を築ける」といったメリットがあります。
通勤が必要なので面倒に感じる気持ちもわからなくはありませんが、こうしたメリットを考えると常駐も悪くありません。
なお、IDHフリーランスが保有する常駐案件は都内でも交通網がトップクラスに発達しているJR山手線の内側が多いので、こちらもぜひ検討していただきたいと思います。
まとめ~クラウドにとどまらず、サーバーレスの習得も視野に!~
現役インフラエンジニアの方は現在の主流であるクラウドからもう一歩先に進み、サーバーレスコンピューティング(AWS LambdaやGoogle Cloud Functions、Azure Functionsなど)のスキル習得をおすすめします。サーバーレスはサーバーの構築が要らず、運用の負担も大幅に軽減できるので今後利用が拡大し、扱えるエンジニアの需要が高まるからです。インフラ領域はインフラの基本的な構造を理解していれば、新しい技術にも比較的早く対応できるというメリットがありますし、コツコツ真面目に作業できる皆さんならサーバーレスもすぐ習得できるでしょう。
安定した需要が見込めるインフラエンジニアはIT業界でも屈指の安定職種ですが、フリーランスへの門戸は広くありませんでした。しかし、これからはキャリアの選択肢が増えて、ひと昔前では難しかったダイナミックな働き方ができるようになるかもしれません。
私もインフラエンジニア出身です。
皆さんが今まで以上に活躍できるよう心から応援しています。